「Vision 2020は、ボルボの未来への指針」

ボルボ・カーズ安全対策部門の副所長でシニアテクニカルアドバイザーのヤン・イーヴァソンは、「Vision 2020」の背景にある考えと、その目標を実現するための行動について語ります。

「Vision 2020」の進行状況は順調でしょうか。また、その評価基準は何ですか。
ボルボでは、国の統計を見てボルボ車の安全性の改善状況を判断しています。私たちの取り組みが順調に進めば、2020年までには交通事故による重傷者や死傷者の数はしだいにゼロに近づいていくでしょう。また、2014年には新型XC90を発売しました。このクルマが事故による死傷者をさらに減らしていくと考えています。

世界中のデータを収集しているのでしょうか。
基本的にはボルボのお客様のデータとスウェーデンの国の統計を組み合わせて使っています。さらに、ドイツ、イギリス、アメリカなどの国の統計データで補完しています。

ボルボの安全に対する知識に深みがある根拠は、スウェーデン本社のデータベースに蓄積された45年にもわたる膨大なデータにあります。そこには衝突の原因、事故の直前、あるいはその最中に車体や搭乗者に何が起きたかを知るために必要な情報がすべてそろっているのです。

ボルボの「スケーラブル・プロダクト・アーキテクチャ(SPA)」を採用した新型車は、「Vision 2020」の実現にどれくらいの貢献するのでしょうか。
SPAは、乗員を守るという面でも、衝突を回避するという面でも安全性を高めました。乗員を守るという面では、安全ケージをさらに強化し、高硬度なボロンスチールの使用率を40%まで高めました。また、フロント部分は、今までより大きな衝撃を吸収できる構造になっており、より多くの人命を衝突事故から守ることができます。

さらに、シートベルトも進歩しました。最新型のシートベルトは、道路上での衝突だけでなく、道路から飛び出して荒れた地面に落下した時にも大きな効力を発揮します。シートが自動的に引き締まり、特にフロントシートに座っている搭乗者を効果的に保護します。

もちろんボルボは、衝突回避に向けた次の一歩も踏み出しています。ボルボはフロントガラスにレーダーカメラを搭載しました。新型XC90にはこの機能が標準装備されており、今後販売されるクルマにもこの機能は搭載されます。

安全性向上のためのさまざまな技術は「Vision 2020」の実現にどのような役割を果たすのでしょうか。またオートブレーキや衝突回避などのアクティブ・セーフティ技術は、エアバックやシートベルトといった外部からの力が加わることで作動するパッシブ・セーフティ技術よりも、車の安全性に大きく貢献するのでしょうか。
ボルボ車の設計における最も重要な考え方は、人を保護する安全性です。私たちは長年、実際の衝突事故から得た知識をフルに活用することで、ボルボの安全性を進化させてきました。そして現在は、この知識を使って衝突回避テクノロジーの向上に取り組んでいます。今後数年で、新型車に標準装備されるレーダーカメラを活用した、より効率的な安全対策を実施する予定です。高性能カメラの搭載は、今後私たちが発売するすべてのクルマの安全性機能に役立つ大きな投資なのです。
ボルボはいま、衝突回避と「アクティブ・セーフティ」の開発に注力していますが、あくまでもその根底にあるのは、ボルボが従来から搭載しているパッシブな技術、つまり衝突時に人を守ることによる安全性の確保です。

V40のような小型車に大型車と同じような安全性を実現するためには、なにが問題となりますか
今までは大型車と小型車には車重の違いがありました。そしてもちろん小型車の車内空間は、大型車よりも狭くなります。また、外部からの衝撃を吸収するための車体の長さも短いです。しかし「アクティブ・セーフティ」により、将来的には、車のサイズや重さはさほど重要ではなくなるでしょう。そしてボルボが大型車向けの新しい機能やセンサーの開発に取り組むことで部品が標準化されれば、それは小型車にも波及していき、いずれ大型車と同等の高い安全性を実現できるでしょう。

「Vision 2020」の実現に関して、現在直面している課題は何ですか。
現在は運転の状況の全てを網羅した大量のデータの分析を行っています。というのも、なぜ衝突が起きたのかを理解するためには、衝突そのもののデータを分析するだけではなく、衝突の前に何が起きたのかまで分析することが必要だからです。ここからさらに先へと進むためには、システムの情報を収集する強力なセンサー技術を開発する必要があります。このセンサーは、車内、そして車外でどんなことが起きようとも、常に機能していなくてはなりません。私たちは新型XC90で大きな一歩を進むことができました。このセンサーは将来に向けてより一層改善されていくでしょう。

全自動あるいは半自動運転の技術は「Vision 2020」にどの程度貢献するのでしょうか。
それらはボルボ車の開発においてこれからの最も重要な部分になると思います。私たちはまずは比較的単純な状況での実験から始めており、最終的には危険度の高い状況を回避できるレベルにまでその性能を高めていくつもりです。自動運転を進化させるためにボルボが開発している先進技術は、「Vision 2020」を達成するための重要な要素です。

ボルボは「Vision 2020」に向けて数多くの衝突事故の情報を収集していると思いますが、特に多い事故、あるいは危険な事故とはどのようなものでしょうか。
最も多い事故は、渋滞中に後続車が巻き込まれる事故です。また最も深刻な事故は、道路から車が飛び出したり、交差点に人がいる場合、そして正面衝突です。

ボルボでは最近このような問題に注目し、「ラン・オフロード・プロテクション」や交差点でのブレーキ機能に取り組んでいるようですね。
その通りです。この機能は、数多くの重大な場面に対応します。さらにボルボでは今後、滑りやすい道路を検知する機能やドライバーの行動パターンをモニターして衝突を予知し、衝突を回避する、といった機能も実現していきます。

「Vision 2020」のような取り組みをしている自動車メーカーはボルボだけですが、なぜでしょうか。
この安全性についてのビジョンは、ボルボがクルマの安全に責任を持つという宣言です。ボルボのお客様は、クルマに最高の走りと先進的な安全を求めています。お客様のデータと技術者の深い知識があるからこそ、私たちはこのビジョンを実現できるのです。

最新のボルボに搭載されている多くの技術、あるいはよく似た技術は、現在では一般的なものになっています。安全面への取り組みに関して、ボルボが他社と違う点は何でしょうか。
実際の衝突事故やその原因についての知識の深さ、そして車内の「人」にフォーカスした事故分析です。技術は運転者や同乗者に役立つものでなければなりません。安全性でのパイオニアであるためには、それらが必要なのです。

「Vision 2020」は実現不能な夢だ、と考えている人たちに、何を言いたいですか。
「Vision 2020」は考え方や働き方の指針であり、ボルボの将来への展望です。ボルボに関連するすべての人はこの取り組みを理解しています。このビジョンはボルボの信条であり、皆が同じ方向を目指して仕事をしているのです。