|
今でこそ世界中のクルマが採用する3点式シートベルトですが、実は50年前にボルボが開発し、特許を取得した安全技術です。ひとりでも多くの命を救いたいとの願いから、ボルボはこの特許を無償で公開し、世界全ての自動車メーカーが装備できるようにしました。こうしたボルボの安全へのあくなき追求は今でも、そしてこれからも止まることはありません。
多くの人々は、3点式シートベルトが過去50年間変わっていないと思っています。これは正解でもあり、間違いでもあります。シートベルトの独創的でシンプルな基本設計は開発当時から変わっていませんが、現在のシートベルトは、革新を続けるハイテク安全システムの一部であるという点で50年前とは異なっています。
3点式シートベルトは1959年の導入以来、全てのボルボの乗員保護において常に中心的な役割を果たしてきました。シートベルトをより快適、かつフレキシブルな装備に改良したイナーシャリール(自動ロック)構造のシートベルトは1969年に標準装備となりましたが、これはその改良点が外観から認識できる最も大きな変更箇所でもあるのです。
目に見えない変更点であっても、ボルボにおけるシートベルトの改良作業は急速な安全技術の進歩の速度に合わせて継続されてきました。ボルボ・カーズの室内安全部門を率いるレナート・ヨハンソンは次のように述べています。「シートベルトは乗員を効果的にシートに固定します。他の安全装備は補助的な役割を果たし、シートベルトの効果をさらに高めます。例えば、衝突事故の際にかかるエネルギーに関する情報を瞬時に伝え、シートベルトと共に最大限の乗員保護を提供します。」
衝突とエネルギーを制御 一つの例がシートベルト・プリテンショナーです。この装置は衝突センサーの信号をキャッチすると自動的にベルトを巻き取り、乗員を固定します。例えば、この装置があれば、冬のコート等の分厚い衣類が原因でできるベルトと身体の隙間が少なくなります。このようにプリテンショナー装置により、乗員のより効果的なシートへの固定が可能です。
シートベルトの安全性を向上させるもう一つの重要な機構は、近年のボルボのシートベルトで採用されているフォース・リミッターです。シートベルトが引き出される速度を監視するセンサーを使い、フォース・リミッターが「動質量」といわれる乗員の前方への移動量を感知します。
これにより、乗員を座席に拘束する力を調整し、「動質量」吸収の最適化を実現します。乗員の身体が過剰な力で拘束されると、損傷を負う可能性が発生します。その一方でフォース・リミッターが過剰に低い値で設定されると、乗員の身体は前に投げ出され、エアバッグやインストルメントパネルとぶつかり、怪我をすることになります。
フォース・リミッターは状況に合わせて作動します。例えば、衝突発生直後におけるシートベルトの衝撃エネルギー吸収値を高く設定し、エアバッグが作動したら値を低くし、エアバッグに衝撃エネルギーの一部を吸収させることができます。
システムの相互作用をセンサーが決定 プリテンショナー装置、エアバッグ、フォース・リミッターの作動タイミングとその方法は、乗員の身長や体躯と、衝突事故の種類によって決まります。いずれの場合においても正しい決定を下すために、車載コンピューターは事前にプログラム化された数千の想定衝突シナリオとボルボが分析を行った実際の事故データを使います。想定衝突シナリオには強い衝撃を伴う正面衝突やトラックとの正面衝突の際の潜り込み、さらには発生原因が特定しにくい側面衝突まで、さまざまな衝突場面が開発段階で活用されています。なお、事故の種類によって複数のシステムの作動速度と作動段階が規定されます。情報は車両全体に取り付けられた複数のセンサーから発信されます。車体中央にあるメイン・センサーがデータを照合し、それに従ってシートベルトを含む複数の安全システムがどのように相互作用すべきかを決定します。
乗員一人一人に合わせた解決策 後部座席にインテグレーテッド・チャイルド・クッションが取り付けられている場合、シートベルト保護システムは状況に合わせて調整され、フロントシートとは異なる働きをします。これは、後部座席のシートベルトが、体躯が小さく体重の少ない乗員も安全に保護する必要があるからです。
安全性と着用促進のためのシートベルト開発 現在の安全システムは相互作用することで最大の能力を発揮するように設計されており、ここでもシートベルトは大きな役割を果たします。では、今後はどうなるのでしょうか?私たちは2020年になっても今と同じシートベルトを使っているのでしょうか?レナート・ヨハンソンは次のように説明しています。「ボルボは、2020年、そしてそれ以降も現在使用されているシートベルトを使い続けると考えます。外観は現状と少し異なる可能性はあります。3点式ではなく4点式になるかもしれません。着用をより簡単にするためです。また、自動的に衝突を回避する車が開発されれば、シートベルトと決別することになります。しかし、この分野でさまざまな研究が進んでいるにもかかわらず、それはまだだいぶ先の話です。」
シートベルトの開発は、二つの観点から行われてきました。ひとつは、シートベルトと作動システムをできるだけ安全にするというもの。もう一方は、さまざまな措置を講じることで、ベルトの着用をより簡単で便利なものにするというものです。
4点式シートベルトも一つの可能性 4点式シートベルトの可能性はボルボや他の自動車メーカーによって議論されており、いくつかの解決策も提示されてきました。しかし、必要な要件を全て満たす技術的解決策は未だに見出されていないのです。
4点式シートベルトには明白な長所があります。例えば、横転事故の際、乗員拘束力は4点式シートベルトの方が優れています。(ラリー用の車がより多くの接合ポイントを持つ4点式安全装置やシートベルトを採用している理由の一つはここにあります。)また、3点式シートベルトから乗員が滑り出すリスクも軽減します。
しかし、4点式シートベルトには欠点もあります。4点式シートベルトは、「X」の文字のように乗員の身体を斜めに通るよう設計されなくてはなりません。胸の対角線上が人間の身体で最も強い部分であり、衝撃の負荷を吸収する能力が最も高い部位です。従って、車体構造に自然な接合部分が存在しない中、最も効果的な方法でベルト上部の接合部分を車に取り付ける方法を見出すことが大きな課題となります。
もう一つの課題は着用促進にかかわることです。人々は50年かけて3点式シートベルトに慣れ親しんできました。ここで新たに4点式シートベルトが導入されたら、人々はどう反応するのでしょうか?装着率が下がるとしたら、現行の3点式シートベルトの固定方式を改良した方が得策なのではないか?ボルボ・カーズは現在こうした課題を検討しており、将来車種における4点式シートベルトの採用の可能性も否定していません。
潜在的危険性に反応するモーター付シートベルト 潜在的な危険性をはらむ状況下でドライバーを自動的に正しい位置で固定し、かつベルトを締めるモーター付シートベルトは全く新しい技術です。例えば、ハンドルが頻繁に動くアグレッシブな運転をするとシステムが作動します。このようは状況では、シートベルトの支えが通常以上に必要になるからです。また、衝突回避システムから障害物の接近を知らせる信号をシートベルトが受けることも可能です。もしくは、ドライバーが眠気を催している、あるいは注意散漫になりかけていることを車両が察知するとシートベルトが警告を発する機能も想定されます。ベルトが自動的に締まりドライバーを正しい位置に座らせ、ドライバーに注意を喚起するのです。また、このシステムのメリットは、火薬を点火させる方式のプリテンショナー装置と異なり、消耗することなく何度でも起動させることができる点にあります。
使い勝手の良いシートベルト しかし、多くのドライバーがシートベルトを着用していないのが現実です。従って、シートベルトの着用をより自然で便利にすることは、常に議論の対象とされてきました。 選択肢の一つは、乗員が座ると座席の間から自動的に上がってくるバックルの採用です。この方法は後部座席において特に有効で、バックルを探す手間が省け、シートベルトの着用が容易になります。この他にも、ストロボ(閃光灯)を用いてシートベルトの使い方を乗員に示す方法や、暗い場所でもシートベルトを見つけやすくするために、シートベルトに光る細長い布を縫い込む方法があります。
自動的にシートベルトが乗員の身体を交差して掛けられ、締まるというシステムの実験が行われています。ここでの課題は技術的な問題ではなく、その使用方法にあります。シートベルトはどのタイミングで着用すべきなのか?どの時点で乗員が着席したと見なすのか?着席しても車を発進させることが目的ではない場合はどうするのか?ドアはいつ閉めるのか?イグニションキーはいつ回すのか?着席したばかりの乗員が花束や大きなアイスクリームを抱えていたら?開発技術者はこうした興味深い課題に対する答えを見出さなくてはならないのです。
シートベルトそのものの変化 ボルボや他の自動車メーカーが現在採用しているシートベルトは、限られた数の部品メーカーから供給されています。ベルトの伸縮特性に若干の違いはありますが、その構造や幅は同じです。幅広のベルトの方が高い保護能力を有すると思うかもしれません。しかし、エネルギーはベルトの中央部分に集まる傾向があるため、ベルトの幅を広げてもそのメリットは限定的です。また、特に女性にとって、胸を斜めに通るベルトは幅が狭い方が快適なのです。
ベルトを膨張式にし、フォース・リミッター機能を持たせることも一つの選択肢とされ、複数のメーカーによって実験が行われてきました。シートベルトと新技術を相互作用させることもシートベルトの効果を向上することにつながります。2008年の『ボルボXC60』導入と併せて、ボルボ・カーズはプリ・プレペアード・レストレインツ(PRS)を導入しました。PRSは衝突回避システム『シティーセーフティ』と同じレーザーセンサーを採用し、エアバッグやフォース・リミッターと相互作用することで、衝突時の衝撃に合わせてより効果的にこの二つを制御します。
最高の乗員保護を確保するためのボルボ・カーズの取り組み 比較的単純でありながら高い効果を発揮する機械設計で作られる3点式シートベルトを基本に、ボルボ・カーズは乗員を最大限保護するハイテク安全システムを開発してきました。1959年の革新的な発明から現在に至るボルボの歩みは下記の通りです。(数字は年数)
1959 ボルボがフロントシートに3点式シートベルトを世界で初めて標準装備 1967 後部座席にシートベルトを標準装備 1969 フロントシートにイナーシャリール・3点式シートベルト採用 1971 フロントシートにシートベルト非装着警告灯(シートベルト・リマインダー)採用 1972 後部座席に3点式シートベルト採用 1986 後部中央座席に3点式シートベルト採用 1987 機械式プリテンショナー装置採用 1991 フロントシートのシートベルトに自動高さ調整機構採用 1992 フロントシートに火薬式プリテンショナー装置採用 1993 3点式イナーシャリールシートベルトを全座席に採用 1996 フロントシートのシートベルトにフォース・リミッター機能採用 1999 火薬式プリテンショナー装置を全座席のシートベルトに採用 1999 フロントシートの腰ベルトにフォース・リミッター機能採用 2003 シートベルト・リマインダーを全座席に採用 2003 火薬式プリテンショナー装置をフロントシートの腰ベルトに採用 2003 アダプティブ・フォースリミッター装置をフロントシートに採用 2007 後部座席の大人と子供に独立式2段階のフォース・リミッター装置採用 2008 低速走行時衝突のためのプリ・プレペアード・レストレインツ(PRS)をフロントシートに採用
記載の内容及びデータは、ボルボ・カー・コーポレーションのインターナショナルモデルについてのものです。 内容は国によって異なることもあり、また、事前の通告無しに変更される場合もあります。
 1959年 フロントシートに3点式シートベルト標準装備 (写真モデルはVolvo 122)
この件に関するお問い合わせ先 ボルボ・カーズ・ジャパン 一般のお問い合わせ先 : フリーダイヤル 0120-55-8500
|