自動車の安全性を実現するために

2024/11/16にボルボの”Safety”をテーマとしたトークイベント「ボルボの考える自動車の安全とは」のレポート第2弾は、ボルボの安全に関する取り組みの歴史を中心にお届けいたします。 カーライフ・ジャーナリストのまるも亜希子氏をお招きし、ボルボ・カー・ジャパンのプロダクト・マネージャーである畑山真一郎とともに、お二人の体験と実際の映像を交えてディスカッションをしました。

安全に関する取り組みの歴史

安全検証の歴史

畑山は、ボルボが行ってきた安全検証の歴史を紹介。その中一例としては、2012年に米国道路安全保険協会が新たに導入した新衝突試験項目である「スモール・オフセット衝突試験」のテストについて触れました。その、新しいテストは、車体前面の25%、つまり運転席側の一部だけを壁にぶつけて損傷具合を見るというもので、ボルボと一部の自動車メーカーしか好成績を残すことができませんでした。

大切なのは基準対応ではなく、実際の事故から人命を守ること

何故、ボルボがこういった新基準でも問題なく好成績を収めることができたか、それは、独自の事故調査を通じて、そういった事故が実際に起きていることを把握し、どのように被害を最小化するか、ということを設計に織り込んでいたからです。つまり、ボルボは既にある安全基準をクリアするためだけに車を作っているわけではないということを意味しています。

カーライフ・ジャーナリストのまるも亜希子氏

衝突事故は避けられない

たとえ自動ブレーキは付いていたとしても衝突事故を100%避けることは残念ながらできません。畑山は、現実の事故では、衝突した相手車両への配慮や、歩行者2輪車への対応などとともに、車内の乗員の傷害を軽減するために、如何に衝突時の衝撃を吸収しながら乗員の保護スペースを確保するのかが課題であると説明します。例として、XC90の3列目のシートが後ろから追突される安全検証の映像を見せてくれました。

「あたりまえ」の実現

3列シートのクルマの場合、特に後面衝突の際に、乗員との距離が近く、安全性の確保が困難と言われていますが、ボルボは、シートがある以上、それは車内のどこに付いていても、安全基準は同一であるべきとしており、設計の前提として、3列目の乗員の安全性が織り込まれている、と話しました。

ユーザーも声をあげる

まるも氏からは、3列目のシートの安全性について、明確な姿勢を示していないメーカーもあるというお話もありました。全ての自動車メーカーが正しい検証をしているのか、こればかりは確かめようがありません。まるも氏は、「みなさんがメーカーに積極的な質問をすることでメーカーも意識して開発に尽力するんです!」と会場に熱く訴えかけていました。

Safety Centre

自動車安全検証の専門施設

続いて、ボルボが保有するSafety Centreという自動車安全検証の専門施設の紹介へ。この施設では、可動式の走路を持った衝突試験場であり、リアルワールドで実際に起きているあらゆる条件を想定したテストが実施可能とのこと。現実に発生した様々な事故の状況を施設内で再現した上でそれらを解析し、そして対策に繋げる取り組みをしています。現地では、小学生など外部からの見学も受入れているそうです。

3点式シートベルト

3点式シートベルト

テーマはボルボが提供する安全性能の話に移ります。1959年にボルボが開発した3点式シートベルトは、簡単に装着できて、且つ骨盤と上半身をしっかりと固定してくれる仕組みとして多くの車に採用されました。ボルボはその恩恵を全ての人に届けられるように特許を無償公開した結果、これまでに100万人以上の命が救われてきたと言われています。

子どもの安全に対する取り組み

ボルボは世界で一番初めに後ろ向きチャイルドシートや、子どもの背丈に合わせて高さを調節できるブースタークッションを開発。過去には、シートベルトをしていたにも関わらず子どもが死亡してしまった例もあるとして、体格に合わせた正しいチャイルドシートの選択をすることや、シートベルトを使用する場合でも、正しく使うためのポイントを理解することの大切さをお二人は述べていました。

安全を実現する様々な技術

他にも、側面からの衝撃に対応するための車体の設計や、上部からエアバックを出すことができないオープンカーにおける下部から出てくるユニークな頭部側面衝撃吸収エアバッグ、追突事故の際に鞭打ちになってしまうことを避けるため、衝撃とともにシートも一緒に動く仕組みなど、数々の安全対策について説明を加えました。

エアバッグは数ではなく組み合わせ?

昨今では、エアバッグに対する意識も変わってきているとまるも氏は言います。昔はエアバッグの個数で安全性をアピールしているメーカーも多かったそうですが、今はエアバッグの個数ではなく設置する場所が大切であり、配置や組み合わせで如何に衝撃や破片から身体を守るか、という点が重要だそうです。

畑山真一郎

道から落ちたときに

また、居眠り運転などで「道から落ちる」という事故が発生した際に、対応する安全技術についても説明。こういった事故では、乗員に垂直方向のGがかかり、特に脊髄などに重大な傷害をもたらす場合があります。そこで、ランオフロード・プロテクションというシステムを開発。シート構造やシートベルト、エアバッグ、ペダルの脱落、といった多くの機能を組み合わせることで、世界初の安全機能を生み出しました。

様々な角度から安全を追求する

第2弾のレポートでは、ボルボ独自の安全検証の実態と、具体的な安全システムの紹介を中心にお届けしました。会場では、クラッシュテストのリアルな映像に衝撃を受けた方も多かったように見受けられました。次回、最終回となるレポートでは、自動車の安全の進むべき未来について、お二人の熱いトークをお伝えいたします。